Interview 情報システム構築

山田 将史
三菱電機(株)情報技術総合研究所 情報システム構築技術部 情報システム応用技術グループ グループマネージャー

PROFILE
2006年3月 北海道大学大学院情報科学研究科修士課程修了
2006年4月 三菱電機入社、情報技術総合研究所に配属
2010年4月 本社の鉄道ビジネスユニットに異動
2015年4月 情報技術総合研究所に異動し、現在に至る
※所属はインタビュー当時のものとなります

研究者から技術営業を経て開発リーダーへ、というキャリア。

私は入社後4年間、大学院で専攻したパターン認識の技術をベースに、EDI(電子データ交換)のデータ構造変換やトラブル検知について研究を行いました。引き続き、5年目からの5年間は、本社の鉄道ビジネスユニットに所属。技術営業として鉄道各社のお客様に、三菱電機の機器を活用したソリューションを提案し、複数の製作所をとりまとめて開発・導入していく業務に取り組みました。列車に搭載され、列車上の様々な機器を一元的に制御・管理する「列車統合管理システム(TCMS)」と、TCMSと地上システムとの連携システムが主要な担当製品で、私が開発にかかわった装置は現在、首都圏鉄道事業者の車両に搭載されています。
そして、この技術営業の最後の頃に、オリジナルのアイデア「鉄道車両ライフサイクル管理ソリューション」を構想。提案して認められ、再び情報技術総合研究所で、開発ユニットのリーダーとして実現を目指しているところです。

私は新卒入社ですが、新卒でも中途でも、研究所と事業部門の両方を経験して見聞を広める人が多いですね。当社研究所の役割の一つは製品開発の支援。事業部を経験することで、ものづくりの現場とその先のお客様が何を求めているかを把握でき、より社会のニーズに即した研究開発ができるからでしょう。

早すぎず遅すぎず、ジャストタイミングの保守点検を。

鉄道事業の技術営業に取り組むなかで、私は車両を保守点検するサイクルに着目しました。モーターやブレーキなど、鉄道車両に載っている多様な機器や装置は、どれかひとつでも故障を起こしたら運行の阻害につながります。定期的に交換が必要な部品もあります。
解明したいと思ったのは、「どのタイミングで保守点検を行うのがベストなのか?」ということ。部品ごとの最適な交換時期はいつなのか。保守点検サイクルの間を空けすぎると故障発生の可能性が高くなり、といって周期が早すぎても余計なコストや手間がかかります。
ただ、部品の経年劣化時期はある程度読めるのではないか。それなら予測可能ではないか・・・私なりに思案を重ねました。
結果『それなら、TCMSが持っている情報を活用したらどうだろう。ジャストタイミングの保守点検ができるのでは』と、「鉄道車両ライフサイクル管理ソリューション」の構想が頭に浮かんだのです。

大まかに話すと、運行中のすべての車両からTCMSを通じて装置、機器・部品、走行中の荷重等、フィールドデータを吸い上げてデータベース化。鉄道に特有の線路状況や振動など、周辺環境のパラメーターも考慮しながらデータ解析を行い、車両のライフサイクルを通して、保守点検の最適化をはかろうというソリューションです。

自分で構想し自分で立ち上げた以上、必ずモノにしてみせる。

2015年の鉄道技術展でコンセプトを発表。認められ、開発のユニットリーダーを任されたのですが、プロジェクトを立ち上げるのは、思っていた以上に大変でした。私の頭の中にあるイメージを伝え切れず、構想を共有できるメンバーが限られてしまったためです。
実現をはかるには、データベース、ロジック、メカニズム、通信など、関連する専門分野のエキスパートの力が欠かせません。他分野からメンバーを募り、チームを組んで進めようと思っていたのに、『本当に実現できるの?』とか『うーん、いまひとつ分からないなぁ』といった反応が多くて。きっとみんなが賛同してくれると楽観していたのは、自分の勝手な思い込みだったと思い知らされました。

どうしたら理解してもらえるか。あれこれ考えた末、動くものをつくってデモをして、目に見える形で訴求することにしました。データの持ち方は?管理の仕方は?データ構造は?クラウドの活用は?概念だけでは伝わり難いところを、ちょっとしたプロトタイプをつくっては研究所と製作所の両方への発信を続けたのです。結果、賛同・協力してくれるメンバーが徐々に増えて、何とかプロジェクトを軌道に乗せることができました。周囲の理解・協力を得るために必要なプロセスを学べた貴重な経験でした。

現在は、実用化に向けたフェーズとして、お客様の鉄道会社と一緒に、まずは一部の機能の具現化から進めようと考えている段階です。この先、越えるべき壁はまだ高いと覚悟していますが、自分で構想し自分で立ち上げた以上、必ずモノにしてみせるという思いでお客様が喜ぶソリューションを創りたいと思います。

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