Interview 自動運転

今井 良枝
三菱電機(株)情報技術総合研究所 知識情報処理技術部 認知技術グループ 専任

PROFILE
電機メーカーに入社し、主に画像処理技術の研究開発に従事
2016年11月、三菱電機にキャリア入社、現部署に配属
※所属はインタビュー当時のものとなります

「製品のための研究開発」という本来の道

学部生のときに初めて画像工学に出会い、違いが目に見えて分かる技術の面白さに触れて以来、私は修士・博士・社会人を通して画像処理の研究開発に取り組んできました。前職では15年ほど、TVや携帯電話のカラー画像高画質化、LED照明標準化のための色評価などの画像処理技術を担当し、充実した研究者生活を送ってきました。ところが、業績の低迷から事業部門の売却があり、研究の適用事業が狭められることになりました。メーカーの研究開発の目的は、製品として世の中に出すことです。私自身、成果が製品に載って嬉しかった体験があったので、メーカーの研究者として本来の「製品と結びついたR&D」を続けていきたいと思い、転職を考えるようになりました。

転職先選びのポイントは、「技術力があり、研究開発に注力している会社」「業績が好調で、中長期的視野で仕事ができる会社」「画像系の研究開発プロジェクトに参画できる会社」の3点でした。あっせん会社から紹介を受けたなかで、最も条件を満たしていたのが三菱電機でした。説明会や面接で、事業領域が幅広く、いろいろな製品に貢献できる可能性を感じたこと、社風に柔軟性、働きやすさを感じたことも決め手になりました。会社の求人ニーズと私の希望が合致して、情報技術総合研究所への配属が決まりました。

自動車の世界では、高いレベルの安全性が求められる

自動運転の基盤技術研究と製品向けの応用開発が、スマートドライブプロジェクトグループのミッションです。外界を認識する技術と自動車を制御する技術、2つのチームに分かれていて、私は認識技術のチームでカメラを使った画像認識、車載用ヘッドアップディスプレイの画質向上など、2~5年先を視野に研究開発を担当しています。自動車の世界では安全の保証が必須ですから、100%に近い認識率が求められます。一方で、高速走行中にリアルタイム処理を行い、時々刻々と変化する状況を捉え続ける必要もあります。

朝でも夜でも、晴れの日でも雨の日でも、トンネルの中でも悪路でも、あらゆるドライブシーンでスピーディかつ正確な車線、対向車、先行車等のセンシングが求められるわけです。解像度を上げるとデータ量が多くなって処理速度が遅くなる、といって粗い画像では精度が落ちてしまうといった、相反する問題も多くあります。画像認識だけでは実現が難しいので、超音波ソナーやライダー(レーザーレーダー)などと組み合わせ、別のグループが手がけているディープラーニングの成果を取り入れたり、工夫を重ねながら実用可能な認識技術の確立を目指しているところです。

研究所の中には、ちょっとしたテストコースもあって、開発中の方式を車に実装し、センシング、認識性能の試験を行う機会があります。実際にどう動くか、チームのみんなでテストをしていると、製品につながっていると肌で感じ、楽しくなります。

多彩なキャリア

入社して強く感じたのは、関連部署と連携しながら業務を進める体制です。基礎研究と応用開発の情報技術総合研究所、製品開発の自動車機器開発センター(製作所側の開発部門)、自動車向け機器の設計・生産を担当している姫路製作所と三田製作所、役割を分担すると同時に、研究段階から連携して、自動運転の未来を拓くという共通の目標に向かって全員で力を合わせて取り組んでいます。

私たち研究者も製品化のための明確な目的を意識して研究開発に取り組めるうえ、出張や電話会議などを通じて、製品に近い開発、生産現場のエキスパートの知見を吸収できます。また、多くの関連研究、製品開発が社内で推進されていますので、先端技術総合研究所やアメリカの研究所、自動車機器以外の製作所などの支援も得られています。

さまざまな専門のエンジニアがそれぞれ専門性、視点をもち、連携してゴールを目指す…そうした風土がありますので、大きな組織ですが、誰もが、プロジェクトを成功に導くための自分の役割を意識でき、意欲をもって望めるのだと感じています。
また、やる気しだいで道を大きく拡げていけるのも魅力です。基本的に議論による意思決定ですので、考えをアピールし、認められれば、大きな仕事を任せてもらえる可能性もあります。

将来についても、研究職ひとすじ、製作所の開発部門に出て研究成果の製品化まで手がける、研究開発をマネージメントする立場になるなど、多方向のパスがあります。今後の希望を上司と相談したり、直接申し出る仕組みもあり、キャリアの選択肢も広がったと感じています。

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